パウエル議長再任でFRBは来年利上げか

来年2月で任期が切れるFRB議長の後任人事に注目が集まっていたが、日本時間の22日夜にパウエル議長が再任されることが発表された。これでFRBは来年にも利上げをする可能性が濃厚となってきた。

発表後に米ドル高進行

　アメリカのFRBを指揮する議長職は任期が4年で、2018年から現職にあるパウエル議長の任期は来年の2月で切れる予定になっている。

　そのため市場では後任人事に注目が集まっていた。直前の予想ではパウエル議長の再任か、あるいは現理事のブレイナード氏が指名されるかどちらかが確実だった。そしてブレイナード氏はハト派として知られ、議長に指名されたら利上げ時期をこれまでの見通しよりも遅らせると思われていた。

　しかし日本時間の22日夜に、パウエル議長は再任され来年2月以降も現職を務めることが発表された。パウエル議長はブレイナード氏より利上げに前向きなので、これでFRBが来年に利上げをする可能性は非常に高くなった。

　アメリカには政策金利のFF金利の先物があり、FF金利先物の水準によって将来いつどれだけの利上げ（または利下げ）が行われるか予想することができる。そして2021年11月現在の水準を見る限り、2022年中に少なくとも2回（0.5％）の利上げが行われると予想されている。

　アメリカのインフレは最近になっても収まる気配がなく進行しており、インフレ抑制のために来年少なくとも2回程度の利上げが行われることは確実であろう。それどころか4回分（1％）の利上げを予想する声も出ている。

　アメリカが金融引き締めに動く一方で、日本はまだデフレが続いているので日銀が緩和を縮小し引き締めに転換することは当分ない。このような状況だと今後為替市場で円安・米ドル高が進行する可能性は高い。

　実際に22日夜にパウエル議長の再任が発表されると、米ドル/円は114円台後半まで上昇。23日朝方には一段と上昇して2017年3月以来の115円をつけた。

　来年になって米の利上げが行われ、日銀が何もせずに現在の異次元緩和を続ければ為替がさらに円安・米ドル高に動くのは必至になる。このまま120円を越え、2015年の高値である125円すら越えていくかもしれない。

　2015年当時は原油価格が安かったのでまだ良かったのだが、現在のように原油が高いと日本国内ではガソリン価格や他の多くの製品価格が上がるという悪影響が出る。そうなると国民の不満が高まり、政府は日銀に対処を求める声はますます大きくなる。

　日銀は2013年に異次元緩和を開始し、それ以来「緩和をすれば景気が良くなる。円安も日本経済にとってプラス」という考えの下で8年以上続けてきた。だがここにきて円安で国内物価が高騰するという緩和の副作用が強く出てきている。

　今後円安がさらに進行し国内物価が上がったら、それを止めるためには日銀も緩和を縮小し、場合によっては引き締めをする必要に迫られる。しかし政府の債務が1,000兆円以上に膨らんでいる状況では利上げは難しい。また緩和の縮小・停止は結局異次元緩和政策が間違っていたことを認めることにもなりかねず、日銀としては相当苦渋の決断となるだろう。