バフェット氏がインフレを認識する発言

米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が自身の経営する企業の株主総会に出席し、その場で「かなりのインフレ傾向が見られる」とアメリカでインフレが始まっていることを認める発言を行った。

最新のCPIは＋2.6％

　投資で個人として世界最大レベルの資産を築いた人物として知られるウォーレン・バフェット氏は、バークシャー・ハザウェイ（銘柄コード：BRK）という企業を経営している。そして1日にはバークシャー・ハザウェイの株主総会があり、バフェット氏も出席した。

　その場でバフェット氏は「かなりのインフレ傾向が見られる。物価は上昇し続けている」と発言し、アメリカがインフレに突入していることを認めた。すでに多くの財界人などがインフレ傾向やそれに対する懸念を表明しており、バフェット氏の発言で改めてインフレが誰の目にも見えてきていることが明らかになった。

　実際先月発表されたアメリカの3月消費者物価指数（CPI）は、前月よりも0.9ポイントも上昇して前年同月比＋2.6％だった。これは2018年7月以来の高い数字だ。アメリカのCPIはここ10年ほどずっと3％未満が続いており、近い将来にあと0.4ポイント上昇して3.0％になったら2011年末以来となる。

　とは言え変動の激しい食品やエネルギー価格を除いた物価指標にCPIコア指数があり、そちらは3月でもまだ前年同月比＋1.6％とやや低く抑えられている。物価の指標としてはコア指数が使われることも多いので、こちらが2％未満であるなら当局はまだインフレに対処する必要はないと考える。その一方でコア指数はここ10年ほどずっと2.5％未満で推移しており、今後2.5％を超えてきたらインパクトは大きい。

　しかし全体の物価上昇率が＋2.6％で食品・エネルギーを除いた数字が＋1.6％ということは、それだけ食品・エネルギーの上昇率が高いことを意味する。食品やエネルギーの価格上昇は特に中低所得層に対して打撃になるので、決して無視できるものではない。

　4月以降は特に穀物価格が上昇しており、シカゴコーンは4月頭時点では1ブッシェル＝5.5ドルだったものが、4月30日までに7ドルを超えた。シカゴ大豆も4月頭時点では1ブッシェル＝14.5ドルだった価格が、4月下旬に一時16ドルをつけた。

　これら2つに小麦を加えた穀物3銘柄は、4月の高騰ですでに7～8年ぶりの高値になった。コーンは史上最高値が2012年につけた8.4ドルなので、最高値の更新も見えてきている。

　株や仮想通貨なら資産価値が上がるだけなので、価格上昇を不満に思う人々は少ない。しかし穀物やエネルギーなどの価格が上がれば生活を圧迫するので、市民にとっては非常に困る。

　だがそれが今起こっている現実であり、インフレが進行すれば政府や中銀も何らかの対処が求められる。FRBはこれまでのところ「インフレ懸念は一時的」という姿勢を崩していないが、今後インフレが継続すればその姿勢を変えないといけなくなるだろう。