ネット証券で口座への不正アクセスが相次ぐ

ネット証券大手のSBI証券で、今月になって顧客の口座に不正なアクセスが行われ多額の資金が偽造された銀行口座に出金されるという事件が起こった。また岡三オンライン証券でも多くの口座に不正アクセスが見つかっており、相次ぐ不正アクセス事件に証券業界が震撼している。

銀行口座も偽造

　今週16日にネット証券大手のSBI証券が、同社にある顧客の口座6つに対して不正アクセスがあったことを発表した。不正アクセスは先月末から今月上旬頃に行われたと推定される。

　発表内容によると、6つの口座に対して本人以外の何物かが不正にアクセスし、口座にあった有価証券を売却。そして売却で得た資金を銀行口座に出金したとのことだった。出金された銀行口座というのは、正しい出金口座と同じ名義であるが、別口座だったという。

　つまり有価証券を売却した後にネット上からの操作で出金口座を別のものに変更し、そちらに出金した。不正な出金の総額は9,864万円にもなるということだった。そして銀行口座に出金した資金は、すでにATMなどから引き出されていた。

　また18日には岡三オンライン証券が、同社の208口座に対して不正アクセスが行われたことを発表した。ただしこちらは不正アクセスのみで、有価証券の売却や出金など実害はないとのことだった。

　続けて2社のネット証券で不正アクセスが行われた事実に、証券業界が震撼している。特にSBI証券の方は1億円近い被害が出ているだけに相当悪質で、かつ深刻な問題となっている。

　SBI証券の不正アクセスは相当難しい手法を取らないと実現不可能なものだ。まず口座保有者と同じ名前で銀行口座を開設しているが、通常銀行口座の開設には身分証明書の提示が求められる。そのため出金用口座の開設には、偽造された身分証が使われていたという。

　この件で日本の身分証が偽造可能で、しかも偽造のものでも銀行口座開設ができる現実が明らかになった。またSBI証券ではネット上から簡単に出金口座の変更ができることが問題であるため、この事件を受け一部の証券会社はネット上で出金口座を変更できないようにした。

　しかし今回の手口は非常に巧妙で、一旦何物が行った犯罪なのかという疑問が湧く。同時にネット証券のセキュリティに対する疑問も湧いてくる。

　最近ではNTTドコモの決済サービス「ドコモ口座」を使って全く無関係の銀行口座から資金が出金されていたという事件も起きており、資金の移動や決済システムにおける不正行為が相次いでいる。このような犯罪は金融機関が対策をしてもまたそれを破る犯罪が行われるというイタチゴッコになる可能性が高い。このデジタル時代においては、資産管理に対する不安を完全に払拭するのは難しいのかもしれない。