ドル円レートが「黒田ライン」に接近

先週から続く円安は週明け28日になっても止まらず、朝方の1ドル＝122円から夜には一瞬だけ125円をつけるところまで円安が進行した。この125円という水準は黒田総裁が「これ以上の円安は容認しない」と述べていた水準であり、そのラインを超えて円安になった場合黒田日銀が動くかどうかが注目されている。

2015年以来の125円

　米利上げの加速見通しから、3月になって為替市場では急激な円安・米ドル高が進行している。3月5日未明には114円台で週を終えた米ドル/円は、翌週の7日から上昇を開始。その後米利上げ加速見通しは高まる一方で日銀は緩和政策を継続すると示す材料が複数回出たため、7日の週から3週間は円安が止まらず25日は122円台で終了した。

　そして週明け28日になったが、午前中に日銀が「指値オペ」を実施すると発表した。これは日本の長期金利が、日銀が定めている上限である0.25％に接近したために発表された措置。

　日銀は同じ「指値オペ」を2月14日にも実施し、政策の効果で長期金利は14日にやや低下。その後もしばらくは下げ続け3月上旬には0.14％になった。この時の「指値オペ」は効果があったと言える。

　しかし28日の「指値オペ」は効果が小さく、長期金利は0.25％付近のままあまり下がらなかった。そこで日銀は午後になって、「連続指値オペ」という新政策の発動を発表する。「連続指値オペ」は単純に「指値オペ」を連続で実施するもので、今回は29～31日の3日間連続と発表された。この政策は去年3月に発表されたもので、実際に発動するのは今回が初となった。

　ところが「連続指値オペ」を発表したことで、為替市場で円売り・米ドル買いに拍車がかかった。午後4時前には123円10銭付近だった米ドル/円は、その後数時間で大きく円安に動き、124円を突破しさらに一瞬だが125円もつけた。

　125円台は2015年8月以来約6年半ぶりの円安水準となる。そして2015年夏の天井は125円台だったので、126円をつけると約20年ぶりの円安水準になる。

　米ドル/円の125円付近の水準はかつて「黒田ライン」と呼ばれたことがある。それは2015年に125円をつけた際に日銀黒田総裁が、それ以上の円安は容認しないとの発言をしたためにそう呼ばれた。黒田総裁はまだ現職の総裁なので、黒田ラインも残っていると考えられる。

　そのため125円付近になったらそれ以上の円安を止めるために黒田日銀が動くかどうかが注目される。もっとも今のところ緩和政策と長期金利の誘導目標は止めるつもりがないので、0.25％上限の防衛とそのための「指値オペ」の実施は廃止しないだろう。

　だがアメリカや他国の長期金利は上昇が続いており、日本の長期金利が0.25％以下に留まればそれは必ず円安材料になる。長期金利の上限を撤廃しない限り円安を止めることは、難しいのだが、撤廃して金利が上がると日銀・政府にとって大きな負担になり撤廃することも難しいのが現実だ。