ドイツの連立樹立失敗で高まる欧州不安定化の懸念

ドイツでは9月に総選挙が行なわれ、メルケル首相の率いる与党が第1党の座を確保した。しかし議席は大幅に減らしており、政権運営には連立を組まないといけなくなった。そして総選挙から2ヶ月経った今、連立の交渉をしていた党と決裂してしまった。

連立政権は樹立できず

ドイツでは9月24日に総選挙が行なわれ、焦点はメルケル首相の与党が勝ってメルケル首相が4選されるかどうかにあった。ちなみにドイツの連邦議会は709議席なので、355議席以上が過半数となる。

そして終わってみた結果は、メルケル首相のキリスト教民主・社会同盟（CDU・CSU）が第1党の座を確保。しかし議席は選挙前の311から245へと大幅に減少した。

各野党の結果を見ると、前期は与党の連立相手だった社会民主党（SPD）が153議席とこちらも議席を減らしたが最大野党になった。そして極右と言われる新興政党の「ドイツのための選択肢（AfD）」が、選挙前は議席が0だったのに94議席獲得と大躍進。SPDに次ぐ第2野党になった。

その他の野党としては、自由民主党（FDP）が80議席、左翼党が69議席、緑の党が67議席という結果だった。

今回メルケルにとって厳しい状況になったのは、SPDが連立を組まないことを宣言しているためだ。SPDは最近のドイツでは与党に次ぐ2番目の勢力を持つ党であり、前期はそれが連立を組むことに同意したからこそ、絶対的に安定した政権が運営できた。ところが今期は連立を拒否しており、より小さい政党と組むしかない。

そしてAfDは移民に対して厳しい政策のため、与党とは隔たりが大きく与党の方で連立を組む意思がない。また左翼党とも連立を組もうとはしなかった。

その意味で、与党にとって唯一の選択肢はFDP、緑の党との3党連立だったのだ。しかし移民に関して緑の党は緩和的な政策を求めているのに対し、他の2党は制限をする構えでいる。

また緑の党は名前の通り環境問題に積極的に取り組む政党だが、その点でも他の2党とは政策面で合意に至らなかった。結局この3党連立交渉はまとまらず、19日になって決裂したと発表された。

これでドイツは今後政治的に非常に不安定になる。連立政権が組めないなら、今後は法案ごとに野党の協力を取り付けないといけないので、法案がなかなか通らない。あるいは解散総選挙をして改めて安定した政権を目指す道もある。

どちらにしても、ドイツの政局の安定にはまだかなり時間がかかるのは間違いない。そしてEUの中で経済的にナンバー1のドイツが不安定になったら、EUの将来はかなり厳しくなる。すでにかつてナンバー2だったイギリスは脱退を決めた。ここでナンバー1のドイツに何かあれば、EUの存続そのものが危うくなることもありえるのではないだろうか。