トルコ中銀のアーバル総裁が更迭される

先週2％の利上げを発表したばかりのトルコ中銀のアーバル総裁が、日本時間の20日土曜朝に突然更迭された。後任には与党の元議員の人物が指名されたが、これでトルコは過去2年間で3回目の中銀総裁更迭となり、金融政策はかなり迷走している。

アーバル総裁は大幅利上げ

　トルコ中銀は18日に政策金利を発表。市場の予想は1％の利上げだったが、インフレに対抗するために予想を上回る2％の利上げを発表し政策金利を19％とした。そしてこの決定をした時点での総裁は、昨年11月に就任したばかりのアーバル総裁だった。

　しかし日本時間の20日土曜朝になって、突然アーバル総裁が更迭されたというニュースが流れた。後任には与党・公正発展党（AKP）の元議員であるカブジュオール氏が指名された。

　更迭された理由は発表されていないが、関係者は「アーバル総裁の利上げ政策に対し、エルドアン大統領が不満を持っていたためではないか」と見ている。エルドアン大統領は以前から中銀の利上げに反対していた。

　アーバル総裁が昨年11月に就任した当時トルコの政策金利は10.25％だったが、それから現在まで4ヶ月あまりで3回の利上げを行い現在の政策金利は19％にもなっている。

　トルコの中銀総裁は、過去2年の間の3回も更迭された。2019 年前半に政策金利を24％という超高水準に維持していたチェティンカヤ総裁は、エルドアン大統領が利下げを望んでいたために2019年7月に更迭された。

　次に就任したウイサル総裁は緩和派だったので、就任後すぐに利下げを実施。2020年春には政策金利が8.25％まで下げられたものの、そのために外為市場でのリラの下落とインフレが進行。金融政策はエルドアン大統領の望み通り利下げを続けたのだが、リラ安とインフレの責任を取らされる形で昨年11月に更迭された。

　そしてアーバル総裁はリラ安とインフレを止めるために大幅利上げを実施したところ、今週末また更迭されてしまった。これで2年間で3人目の中銀総裁更迭だが、1人目は利上げに不満、2人目はリラ安とインフレを止められないことに不満、3人目はまた利上げに不満と矛盾する理由での更迭が続いている。

　リラ安とインフレを止めるためには利上げが必要で、逆に利下げをすればリラ安とインフレは当然進行する。利下げとリラ安・インフレの抑制を両立させることは極めて難しいのだが、それでもエルドアン大統領は中銀総裁に責任を押し付ける形で更迭を続けている。

　今回指名されたカブジュオール氏は緩和派と言われるので、就任後は利下げをするだろう。そうなるとまたリラ安とインフレが止まらなくなることが考えられる。エルドアン大統領はそうなったらまた総裁を更迭するのだろうか？どこかで妥協しないと、いつまでも同じことを繰り返すだけになる。