トルコリラに大幅リバウンドを期待してはいけない

最近になってトルコリラの下落が目立っており、対円では2005年のデノミ以来最安値である26円台をつけた。また対米ドルでも同じく最安値を更新し、1ドル＝4リラを超えた。これだけ下がれば「いずれはリバウンドするだろう」という考えが浮かぶかもしれないが、トルコリラにはそれを期待しない方がいい。

地政学的リスクも高い

トルコリラが最近になってまた一段と下落しており、対円では1リラ＝26円台、対米ドルでは1ドル＝4リラをつけた。どちらも2005年にトルコがデノミを行なって以来の、最安値となる。

これだけ下がると、「いつかはリバウンドするだろう」とか「安くなったから買ってみよう」と思うかもしれないが、トルコリラには大きなリバウンドは期待しない方がいい。というのも、トルコという国のファンダメンタルズ自体が脆弱で、通貨の下落は避けられないと言ってもいいからだ。

トルコは歴史的にインフレ率が高い国だ。20世紀後半の数十年間、トルコのインフレ率は年50～100％という高い数字だった。これはジンバブエやベネズエラのように極端に高いインフレではなかったのでそれほど報道されなかったが、高インフレ体質の国であることは間違いない。そして国内ではインフレになると同時に、為替市場では常に通貨が下落していた。

トルコはインフレを抑えるために、2005年にそれまでの100万リラを新1リラと交換するデノミを実施。この時生まれたのが現在のリラだった。旧通貨と新通貨で価値が100万倍も違うので、トルコの通貨を語る場合は2005年のデノミ前と後を区別した方がいい。

その後数年は比較的リラのレートは安定していたものの、2010年代に入ってまた長期的な下落が続いている。2011年には1ドル＝1.5リラだったレートが、現在ではリラの価値は半分以下になってしまった。

また最近のトルコの独裁化と、欧米との関係悪化も悪いファンダメンタルズとなっている。トルコでは2016年7月に軍の一部がクーデター未遂を起こし、エルドアン政権を倒そうとしたが失敗。

それ以降エルドアン政権は強権的政治に傾き、クーデター未遂のような事件があったために国民もそれを支持する者が増えていった。しかし欧米諸国は独裁化を好ましく思わず、関係は悪化している。

さらにトルコは周辺に不安定な国が多い。隣国・シリアの内戦はもう7年も続いており、終わりが見えない。最近になって壊滅して報道もあまりされなくなったが、IS（イスラム国）という過激派組織の拠点も近くにあった。またクルド人との対立も続いている。

これらの要因がトルコの政情に対する懸念を高め、通貨のファンダメンタルズの悪化につながっている。今年になってトルコはクルド人の拠点である都市・アフリーンを攻撃したが、これもリラ下落の要因になったと言われる。

このように、トルコリラに関してはファンダメンタルズ自体がかなり悪い状態にある。多少のリバウンドはあっても、大幅なリバウンドはあまり期待しない方がいいだろう。