トルコの通貨危機リスクは遠のいたのか

8月10日にトルコリラが暴落し、一時はトルコの通貨危機リスクが大きく高まった。しかし8月13日の1米ドル＝7リラをピークにその後はそれ以上のリラ下落は見られず、最近では1ドル＝5.6リラ台と8月10日の暴落前に近い水準までリラが上昇してきた。トルコの通貨危機リスクは遠のいたのだろうか？

8月13日以降は反騰が続く

もともとトルコは通貨が不安定な国で、リラは20世紀から常に価値の下落が続いてきた。2005年にはそれまでの100万リラ＝新1リラとするデノミを実施したために、その後数年間はリラの価値は比較的安定。しかしここ最近になってまたリラが下落し始め、特に2018年になって下げが加速していた。

8月頭に1ドル＝5リラだったレートは、8月10日朝までに5.5リラまでリラ安になった。ところがこの日、トランプ大統領がトルコに拘束されているアメリカ人牧師が解放されないため、「トルコの鉄鋼・アルミに対する関税を2倍にする」と発言。

これによって米土関係の悪化懸念が広がり、この日リラは20％も暴落し6.5リラまでリラ安になった。そして週末を挟んだ8月13日には、リラはさらに売られ7リラという最安値をつけた。

この間トルコリラは対円でも下落。8月頭に1リラ＝23円だったレートは、10日朝には20円に。トランプ大統領の発言によってリラが暴落すると17円になり、13日の最安値は15円台だった。

8月10～13日にはトルコが通貨危機リスクに陥る懸念が非常に高まったが、意外にもこの時が底になり、トルコリラはその後少しずつ回復してきている。トルコリラの下落が止まった理由の1つは、トルコ政府があらゆる手段を尽くしたことがある。例えば8月10日の暴落後、トルコ国内の銀行に対しリラと外貨のスワップ取引を規制した。

また暴落以前はエルドアン大統領の圧力によってなかなかできなかった利上げも行った。9月14日には中銀が政策金利を6.25％も引き上げ、24％とした。これは市場の予想を大幅に上回る引き上げ幅だった。

そして最大のポイントは、先週13日にアメリカ人牧師がついに解放された点にある。これまで米土関係の最大のネックだったアメリカ人牧師問題が解決されたので、今後はアメリカとの関係改善が期待できる。対米関係の改善が期待できるなら、リラに対する不安はかなり遠のく。

今後大きなポイントとなるのは、米ドルではないだろうか。8月までのリラ安は、リラの弱さというより米ドルの強さによるところが大きかった。アメリカ経済は好調で、FRBも利上げを続けている。そのような裏付けがあって米ドル高・リラ安が続いてきた。今後米ドル高が続くならリラも弱くなるし、米経済が減速して米ドルが下落に転じるなら、リラは米ドルに対して上がる。

しかし米経済がピークに近付いているという観測も高まっており、それを考えると今後リラが極端に下がることは考えにくいかもしれない。