トランプ関税を巡る裁判所の決定に振り回される市場

日本時間の29日朝に、米の裁判所がトランプ大統領の関税政策の大半を差し止める命令を下した。この命令によって一時市場には安堵感が広がったものの、わずか1日後の30日朝方には今度は控訴裁判所が差し止めを停止すると決定して市場にはまた懸念が広がった。

原告は複数の州と中小企業

　トランプ大統領が今年1月に2回目のアメリカ大統領に就任して以来、数多くの関税政策を打ち出してきた。特に4月3日に発表した全世界への相互関税は世界的な景気後退懸念を高め株の暴落につながったため、2日後には一部を90日間停止とした。

　しかしトランプ大統領の政策はあまりに極端なため、アメリカでも多くの訴訟を起こされている。そして日本時間の29日朝方、アメリカの時間では28日夕方頃に、アメリカにある国際貿易裁判所が「大統領の権限を逸脱している」ことを理由に、これまで発動されてきたトランプ関税の大半を差し止めと命令した。

　ここで差し止めを命じられた関税は相互関税のうち予定通り4月に発動された全世界への10％関税、中国への30％関税、カナダ・メキシコからの一部品目に対する25％関税などになる。

　この訴訟を提起したのは、オレゴン州を中心とした12の州、そしてV.O.S.Selectionsというニューヨークにあるワインの輸入業者を中心とした複数の中小企業になる。

　この命令を受けて29日には市場に安堵感が広がった。為替は報道直後に円が1ドル＝146円まで急落。その後始まった東京株式市場では買い安心感から全面高相場となり、日経225平均は710円高で終了した。

　ところがこの安心ムードはわずか1日で破壊されてしまった。米の裁判では敗訴した一審原告側が控訴し、そして控訴裁判所は控訴審が進行している間は差し止めを停止する命令を下した。つまり控訴の決着がつくまでの間、全ての関税は予定通り発動される。

　この決定によって30日は前日とは逆にリスク回避の流れが広がり、東証は全面安相場となり日経225平均は468円安で終了した。

　4月3日発表の相互関税の例のように、トランプ関税の動向が金融市場に大きく影響する日々が続いている。4月後半から5月前半にかけて新しい関税の発表があまりなかったものの、5月2日にはEUへの50％関税とAppleへの25％関税を発表したことでまた市場が小規模ながら動揺した。

　そして今回は関税そのものではなく、関税を巡る裁判の経過によって市場が大きく動いた。トランプ大統領の関税を巡っては他にも訴訟が起こされており、また今後も次々と起こされることが考えられる。トランプ関税によって市場が大きく動く日々は今後も続く。