トランプ再選で起こりうるシナリオ

米大統領選は予備選が進んでおり、民主・共和党とも予備選開始前から有力と見られていたバイデン大統領とトランプ氏が公認候補になる見通しが高まっている。トランプ大統領は移民に対して厳しい姿勢で知られており、当選したら米の移民政策が大きく変わり経済にも大きな影響が出ると予想される。

移民は恩恵もあるが弊害も

　2024年はアメリカ大統領選の年で、アメリカでは民主・共和党の予備選が進んでいる。とはいえどちらも予備選開始前から有力と見られていた現職のバイデン大統領とトランプ氏の勝利が確定的であり、この両名が公認候補になる見通しが高まった。

　バイデン・トランプのどちらが本選挙で勝利するか今の時点で予想するのは難しいが、トランプ氏の方がやや有利という声もある。

トランプ氏は移民に厳しい姿勢で知られており、2016年の大統領選ではそのような姿勢が評価されて一度は大統領になった。しかし2020年はパンデミック開始で経済・社会が混乱したこともあり、バイデン大統領に敗れて大統領の座から降りた。そして2024年にはまた大統領を目指している。

　一方アメリカ経済の現状はどうなっているだろうか？先週5日に発表されたアメリカの3月雇用統計は予想の前月比20万人増に対し、結果は30万3000人増と予想を大きく上回る良好な数字だった。金利を引き上げてきたにも関わらずアメリカの経済・雇用情勢はかなりいい状況が続いているが、その要因の1つとして大量の移民流入が指摘されている。

　アメリカには以前から合法・違法合わせて多くの移民が流入しており、2023年にパンデミックが事実上終息するとその傾向が加速した。移民として人が多く入ってくれば、そこに需要が生まれるので衣食住関連をはじめとして多くの物が売れる。

　物が多く売れれば企業は多くの製品を生産・販売する必要があるので事業が拡大し、雇用も生まれる。そのようにしてアメリカは強い経済を維持している。

　しかし移民の流入があまりに多すぎることによる弊害も出てきている。特にニューヨーク市は移民の流入が多く受け入れられるキャパシティを超えており、移民による犯罪も増えている。移民問題はニューヨーク市にとって危機的な状況を作り出しており、移民に厳しい政策を求めるニューヨーク市民は多い。

　トランプ氏が再選されれば移民に対して厳しい姿勢を復活させると思われ、その場合アメリカに対する移民の流入が制限されることになる。そうなるとこれまでアメリカ経済を下支えしていた人の増加という要因がなくなる。

　たとえトランプ大統領になっても簡単に移民の流入が制限できるとは限らないが、実現できたとすればアメリカ経済に与える影響はかなり出てくるだろう。