ディエムがついに3月に発行か

2019年6月にFacebookが発表し世界を驚かせた独自仮想通貨の「ディエム」が、発表から2年近くを経てついに今年3月に発行される見通しになってきた。ディエムの登場は仮想通貨や金融の世界を変えるだろうか？

発行通貨は米ドルに固定レート

　Facebookが独自の仮想通貨「ディエム（旧リブラ）」を発表して世界の仮想通貨業界やSNS業界を驚かせたのは、2019年6月のことだった。ディエムの構想は世界最大のSNSであるFacebookのユーザー間で自由に国際送金ができるようにするものであり、実現されれば世界の金融秩序を変えるのではないかという期待と懸念がすぐに浮上した。

　そのため発表直後から各国政府はディエムに対し強く懸念を表明し、米議員の中にはディエムの開発を停止するようFacebookに要請した者もいた。

　2019年の秋に、ディエムの運営団体であるディエム協会はディエムのレートの制度を発表。その当時の構想では、米ドルや日本円など5種類の通貨から構成される通貨バスケット制を採用する予定だった。

　しかしディエムに対する逆風は止まらず、ついに当初の構想を諦めて米ドルやユーロなど法定通貨にレートを固定した複数のステーブルコインを発行する計画に変更。さらに名称も当初のリブラからディエムに変更した。この名称変更も、リブラについたネガティブなイメージを払拭する狙いがあったと思われる。

　このように紆余曲折を経てきたディエムだが、ついに3月後半に発行されるという情報が出回った。最初に発行するのは変更後の計画通りステーブルコインで、米ドルに連動したものになるという。

　ディエム協会には音楽配信のSpotify、配車アプリのUberやLyftといった企業が加入しており、これらの企業は自社サービスの決済手段としてディエムを導入する予定があるという。当初参加している企業は限られるが、問題がなければ今後協会の会員企業以外も決済手段としてディエムを導入することが予想される。

　ディエムは仮想通貨といってもレートが米ドルに固定されたステーブルコインなので、ビットコインなどとは全く別物と言える。ビットコインは価格が変動するので投機目的で買われ高騰しているが、ディエムは固定レートなので投機目的にはなりえない。

　米ドルにレートを固定したステーブルコインとしては、テザーという通貨が現在圧倒的なシェアを占めている。だがディエムが発行されれば、Facebookという世界最大のネットワークの力によってテザーを越えて最大のステーブルコインになるかもしれない。

　レートが対米ドルで固定なので当初懸念されたほどの影響はないと思われるが、ディエムの発行が金融の世界における大きな節目になる可能性は高い。