テーパリングの噂が高まってきたECBの金融政策

2015年3月から2年ほど続けられてきたECBの量的緩和政策。しかし最近になってユーロ圏内のインフレ率が上昇してきたこともあり、テーパリング（規模縮小）が近いという声が高まってきている。

最近インフレ率が上昇

ECBは日米に遅れて2015年3月から大規模量的緩和を開始。最初は月600億ユーロの資産購入でスタートし、その後800億ユーロに増額。そして今年4月からはまた600億ユーロに減額した。

ただ最近になって、出口戦略であるテーパリングが近いのではないかという声が高まっている。その理由はいくつかある。

まず1～2年前に懸念されていたユーロ圏のリスクを、なんとか無事に乗り切れる見通しが立ってきたことがある。ユーロ圏のリスクとは、例えばイギリスのEU離脱を指す。イギリスは昨年6月にEU離脱を問う国民投票を実施。EU離脱派が過半数となった。

イギリスのEU離脱はユーロ圏にとってとてつもなく大きなリスクになると思われていた。しかし株安になったのは投票直後のみで、その後は株式市場にも影響は見られなくなった。

また昨年秋の米大統領選によるトランプ大統領誕生も世界経済にとってのリスクになるかもしれないと見られていたものの、すでにトランプ政権が誕生してから数ヶ月が経つが経済・金融情勢は落ち着いている。

そして今年になってオランダの総選挙やフランス大統領選など、重要な選挙がいくつかあった。これらの選挙で極右政党や候補が勝利してその国がEU離脱に向かうことが懸念されたが、極右が勝利した国はなかった。またドイツでも今年秋に総選挙が行われるが、極右政党はあまり勢いがない。

さらにインフレ率の回復も顕著になった。2015年3月にECBが量的緩和を開始したのは、2014年後半以降の原油安によってインフレ率が低迷し、0％付近に留まっていたためだ。それが昨年末以来の原油高のために、今年になってから2％近くまで回復している。

これらのポジティブな要因から、今年中にもECBがテーパリングを開始するのではないかという観測が高まっている。となるとECBは来年～再来年の前半にも、量的緩和を終了させるかもしれない。

アメリカはQE1からQE3まで3回に分けて大規模量的緩和を続けてきたが、2014年秋に終了した。その一方で日本は、2013年4月に開始した異次元緩和政策に終わりが全く見えない。インフレ率2％の目標達成が見えないため、日銀は終了や出口政策について語ることすらできないのが現状だ。日米欧の中で、日本だけが金融政策の効果が出ないままズルズルと続ける状況になっていくのかもしれない。