チョコレートの値上げはカカオ豆価格高騰のため?!

著者鳥羽賢

2019年1月14日

製菓大手の明治が、4月14日からチョコレートの14商品を値上げすると発表した。この値上げについて明治は、「原料であるカカオ豆価格の高騰が原因」と述べているが、実際のカカオ豆価格は現在どうなっているのだろうか？

カカオ豆の過去記事はこちら。

カカオ豆価格を見ると実は…

明治は昨年夏にもすでにチョコレート商品を値上げしているが、それに続いて短期間で2回目の値上げが発表された。「チョコレート効果」シリーズの5商品は10％値上げ。また残りの9商品については、価格を据え置きにして容量を2～13％程度減らす実質値上げが実行される。

明治はこの値上げについて、「原料であるカカオ豆の価格高騰や物流コストの上昇のため」と述べている。

では肝心のカカオ豆価格は、これまでどのように推移してきて、現在どうなっているのか？カカオ豆の国際価格は、ICCO（国際ココア機関）で取引されるスポット価格がその指標として使われている。

その価格の推移を見ると、21世紀になってから全体的に上昇し、2010年と11年の初頭にはそれぞれ1トン＝3,500ドル程度の史上最高値をつけた。21世紀になって中国やインドなど人口の多い新興国が経済的に発展し、カカオ豆の世界的需要が拡大したのが価格上昇の一因と思われる。

ただその後は3,500ドルの史上最高値を更新していない。去年夏には3,300ドル近くまで上がったので、これが去年夏のチョコレート価格値上げにつながったと考えられる。

では再値上げを決めた3月下旬までに、カカオ豆価格はさらに上昇したのか？いや、全く上昇していないのだ。去年夏に3,300ドルをつけた後カカオ豆の国際価格はむしろ下がり、3月下旬にはすでに2,700ドル台になった。なんと逆に去年夏から20％近くも下げている！

つまり明治の値上げに関する「カカオ豆価格高騰のため」という理由づけは、あまり適切とは言い難い。ただし去年10月に日銀が行った追加緩和以来、円がかなり安くなってしまったことは、もちろん考慮に入れる必要がある。

そこで為替レートを考慮に入れ、円建てで見たカカオ豆価格の推移を検証してみよう。カカオ豆価格を円建て換算すると、2010年初頭の高値時は1kgあたり320円程度だった。この時は民主党政権時代でかなり円高だったことを思い出してみよう。その後去年夏の値上げ時には、330円程度まで上がる。国際価格は1トンあたり3,300ドルで2010年より安かったのだが、米ドル/円レートが1ドル＝100円前後だから円建てでは2010年より高くなっている。

そして再値上げを発表した今年3月下旬現在は、340円付近とさらに上昇。また3月上旬にはカカオ豆の国際価格がもっと高かったので、この時の円換算価格は約350円だった。こうして見ると、円換算の価格は確かに値上げの原因と呼べるほど上昇している。しかし国際価格で見ると2,700ドル台で2010年や去年よりむしろ下がっているので、今回の値上げはカカオ豆価格の高騰のためというより、「円安のため」と言った方がいいのではないだろうか？

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