コロナ特需が弾けたモデルナの「今」

2020～23年のパンデミック中は、日本で多くの人々がモデルナが開発したワクチンを打っていた。しかしパンデミックが終息したためワクチンは不要になり、すでに多くの人がこの社名を忘れていることだろう。そしてコロナ特需が終わったモデルナの株価や業績は、やはり多くの人が予想する通りになっていた。

パンデミックの3年間で売上が300倍

　モデルナ（銘柄コード：MRNA）というアメリカの製薬ベンチャー企業は、2019年までほとんどの日本人が知らなかった。しかし2020年にパンデミックが始まりモデルナが一早くワクチン開発に成功したことで、モデルナのワクチンは日本でも多くの人が打つことになった。

　そしてモデルナはほとんどの日本人が知る企業となったのだが、2023年頃にパンデミックは終息。2024年の今はこの企業の名前を忘れてしまった人々も多いだろう。

　パンデミック開始後にその原因となったコロナウイルスに対抗できるワクチンの開発に一早く成功したことで、モデルナは2020年以降業績・株価ともに急上昇した。決算が12月のモデルナは、パンデミック直前の2019年12月期の通期売上高は6,000万ドル（現在のレートで約85億円、以下同じ）だった。

　それがワクチン開発に成功した2020年12月期は2億7000万ドル（約383億円）、本格的に世界各国に販売が行われた2021年12月期は177億ドル（約2兆5000億円）、2022年12月期は189億ドル（約2兆6800億円）と、数年で300倍以上のすさまじい伸びを見せた。

　しかし2023年になるとパンデミックが終息に向かったことで、すでに主力商品となっていたコロナワクチンの売上が急減。2023年12月期の売上高は67億5000万ドル（約9,600億円）と前年の3分の1近くまで激減した。

　そして2024年はまだ第2四半期までの決算しか発表されていないが、1～3月期の売上高は1億6700万ドル（約237億円）、4～6月期は2億2100万ドル（約314億円）であり、1～6月期の半期でも3億8800万ドルと前年よりさらに大きく落ち込んでいる。

　また9月12日には2024年通期の売上高見通しが公表され25～35億ドル（3,550～5,000億円）とされた。だが6月までの半期でわずか3億8800万ドルなので、この見通しが達成できるかはわからない。

　損益は赤字が続いており、2023年7～9月期の四半期決算では36億ドル（約5,100億円）、2024年1～3月期と4～6月期はどちらも約12億ドル（約1,700億円）の赤字だった。その間となる2023年10～12月期は黒字だが収益額はわずかだった。

　株価もコロナワクチンの開発成功からパンデミック終息にかけて大きく動いた。パンデミック前の2019年には15ドル付近で推移していたモデルナ株は、2020年になりパンデミックが始まりモデルナのワクチン開発が始まると上昇。同年11月にワクチンが承認されてその後の売上急増が見込まれると、株価も急上昇して2021年8月には500ドルをつけた。

　だがモデルナ株のバブルはそこで早くも天井となり、その後は下げが続き2023年11月には62ドルのパンデミック開始後の最安値に。ここ最近は70～80ドルで推移している。

　2020年のパンデミック開始後にワクチン開発に成功して売上高は2019年の300倍、株価は30倍以上になったモデルナだが、そのバブルが弾けこれから真価が問われる。