イエレン議長がFRB理事も退任で今後トランプ色が強まる

来年2月で議長としての退任が決まっている米FRBのイエレン議長だが、理事の職も辞任すると発表された。これで後任の理事もトランプ大統領によって指名されることになり、FRBのトランプ色が強まっていくことは必至となる。

理事には空席が多い

最初に簡単にFRBの制度について説明しておくと、FRBには金融政策を決定する重要な地位にいる「理事」が7人いる。そして議長と副議長は、基本的には理事の中から選ばれることになっている。つまり議長・副議長ではない理事が5人いる。

そして議長・副議長の任期が4年なのに対し、理事は任期が14年もある。だからイエレン議長の議長としての任期は来年2月に終わるが、理事としての任期は2024年まで残っていた。そのためイエレン議長が退任後は理事として残るかどうか、市場の注目材料となっていたのだ。

この点について最近発表があり、議長として退任しパウエル理事が議長に就任した時点で、イエレン議長は理事も辞任すると発表された。この裏でトランプ大統領による圧力などがあったのか、あるいは完全に本人の意思かについては外部の者ではわからない。

実は2017年11月現在、FRB理事の7人のうち3人分は空席となっている。そしてイエレン議長も理事を辞任するので、これで空席が4つ目。さらに最近まで務めていたフィッシャー副議長は、「個人的な理由」で10月に副議長と理事を辞任してしまった。ただし副議長には元財務次官のランダル・クォールズ氏がすでに指名され、理事にも就任するのでフィッシャー副議長の空席はすでに埋まっている。

ともかくイエレン議長が理事を辞任することから理事の空席が4つになり、それらは全てトランプ大統領に指名される。つまり今後はFRBの政策決定にトランプ色がかなり強まって行くことは必至となる。またパウエル新議長も、トランプ大統領に議長として指名されただけあり、かなりトランプ大統領に近い人物なのは間違いない。

ただし金融政策を決めるFOMCは、この7人だけが投票権を持っているわけではない。FRBには12の地区連銀があり、それらの総裁12人のうち5人が投票権を持っている。12の地区連銀のうち、NY連銀の総裁だけは常時FOMCの投票権が与えられる。そして残り4人分の投票権は、交代で他の11人に与えられる。

つまりFRB理事の空席4人分がトランプ大統領に指名されたとしても、それが「7分の4」を意味するのではなく、「12分の4」ということになる。だからFOMCの過半数がトランプ大統領に指名された人物になるわけではない。

ただ4人もいるなら影響力はかなり大きくなる。FRBの議長や理事は大統領によって指名される決まりなので当然かもしれないが、来年以降のFRBはかなりトランプ色が強くなっていくだろう。