アルゼンチン大統領予備選で極右候補が勝利、ペソ下落

13日に行われたアルゼンチンの大統領予備選で、米のトランプ前大統領を支持する極右候補・ハビエル・ミレイ氏が首位になった。この結果を受けて市場が動揺し通貨・ペソは下落。そのため翌14日に中銀は大幅利上げとペソ公定レートの大幅切り下げを発表した。

政策金利は118％に

　今年10月に大統領選が予定されている南米のアルゼンチンで、先週末13日に予備選が行われた。そして極右と言われるハビエル・ミレイ氏が首位になった。

　現在52歳のミレイ氏はアメリカのトランプ前大統領を支持しており、「地球温暖化はデタラメ」など世界の主流とは離れた思想を持っている。経済的にもアルゼンチンの通貨・ペソを廃止して米ドルを法定通貨にするべきという考え方で、「中銀は不要」という中央銀行不要論まで述べている。

　極端な考え方を持つミレイ氏だが、アルゼンチンはここ数年インフレと貧困が広がっており、既存の候補に失望した有権者の支持を集めている。そして13日の予備選で首位になったことで、金融市場では動揺が広がった。

　予備選前の先週末時点で、アルゼンチンペソの公定レートは1ドル＝290ペソ付近だった。5年前の2018年8月時点では1ドル＝29ペソだったので、5年間のペソ下落で10分の1に価値が下がったことになる。また闇市場ではもっとペソが安い水準で取引されている。

　しかし大統領選予備選の結果を受けてペソがまた売られ、14日には1ドル＝300ペソを超える水準もつけた。そこで中銀はそれまで97％だった政策金利を21％引き上げて118％にすると発表。政策金利が100％を超える国は世界でも稀だ。

　さらにペソの公定レートをそれまでより20％近く低い1ドル＝350ペソまで切り下げ、10月の大統領選まではこのレートに固定すると発表した。なお闇市場ではすでに600ペソ以下で取引されているという。

　一方アルゼンチンの株式市場はそこまで動揺しておらず、週明け14日のアルゼンチン株式市場では主要指数のメルバル指数が3％ほど上昇して終了した。

　アルゼンチンでは4年前の2019年8月にも同様の動きがあった。この時は大統領選予備選で当時のフェルナンデス候補（現大統領）が勝利し、それに対して市場が動揺。予備選明けの月曜はペソが30％も暴落し、メルバル指数は38％暴落したことがあった。

　今回はペソの下落のみで、かつ株式市場は暴落していないので2019年に比べるとショックは小さい。だがペソは4年前の水準（1ドル＝50ペソ付近）よりさらに大きく下落しているので、国内物価の上昇や企業・政府の米ドル建て債務の支払いが困難になるなどの影響は出る。

　アルゼンチンは歴史的に見てもインフレ率が高く、何度もデフォルトしてきた。その体質は簡単には変わらないようだ。