アリババ創業者が3ヶ月ぶりに姿を見せる

昨年10月から行方不明となっていた中国のアリババ・グループの創業者ジャック・マー氏が、1月20日にオンライン会議に出席して3ヶ月ぶりに姿を見せた。マー氏の登場に安堵したことでアリババ株や日本のソフトバンクグループ株は上昇したものの、まだマー氏が完全に自由の身になっているわけではないのではないかという懸念が残っている。

20日のアリババ株は上昇

　世界最大手レベルのIT企業となった中国のアリババ・グループ。しかしその創業者であるジャック・マー氏が昨年10月下旬から姿を見せなくなっており、投資家や関係者の間では懸念が広がっていた。

　そのような事態になった原因の1つと見られているのが、昨年10月24日に開催された政財界人が参加するフォーラムで、マー氏が中国当局の金融政策を批判した発言だった。

　この発言が中国当局を激怒させたと見られるようになった最初の事件は、11月5日に上場を予定していたアリババ・グループの一企業アント・グループが、わずか2日前の11月3日に突然上場中止を命じられた件だ。

　そして12月末になって、企業の行動を監督する役割を持つ国家市場監督管理総局が、アリババに対して調査を開始した。さらに12月頃から、マー氏が10月24日のフォーラム以来公の場に姿を見せていないことで懸念が広がっていった。

　ところが今週20日になって、マー氏は突然教育関係者が出席するオンライン会議に姿を見せた。その場では特に体調が悪い様子もなく、元気に会議の場で挨拶などを行っていた。

　マー氏が約3ヶ月ぶりに公の場に姿を見せたことで、アリババ株の投資家や同社の関係者の間で安堵が広がった。香港市場に上場していた同社の株は19日は244.2香港ドルで取引を終え、20日の市場開始時もほぼ同じ水準からスタート。

　しかしこの日の日中にマー氏がオンライン会議に登場したことが伝わったため、場中に大きく上昇。終値は前日比8.5％高の265香港ドルだった。さらに20日のNY市場でもアリババ株は上昇し、前日より5.5％高い265.49ドルでこの日を終えた。

　また保有するアリババ株が財務状況に大きく影響する日本のソフトバンクグループ株も、マー氏登場から1日明けた21日の東京株式市場で上昇。この日は3％高の8,946円で取引を終えた。しかし21日の香港市場では、アリババ株は続伸せずに2.4％下落した。

　とりあえずマー氏が姿を現して無事を確認できたのは良いが、これで全てが問題なかったと安心できるわけではない。マー氏はオンライン会議に登場しただけで、現実世界ではまだ姿を確認できていない。また20日のオンライン会議でも、過去3ヶ月間どこで何をしていたかという詳細な話は聞けなかった。

　マー氏が昨年10月の発言のために中国当局に拘束されているという懸念はまだ完全に拭えず、マー氏の消息は今後のアリババ株に大きく影響してくる。