アメリカの失業率は世界恐慌レベルに向かう

2日夜にアメリカの新規失業保険申請件数が発表され、664万8000件という圧倒的な過去最大の数字が出た。これはアメリカの失業数が爆発的に増えていることを意味し、この状況が数ヶ月続くとアメリカの失業率が世界恐慌時のレベルにまで到達することになる。

これまでの記録の10倍

2日の午後9時半にアメリカの新規失業保険申請件数が発表された。この指標は毎週発表されるもので、名前の通り失業した人々が新規に失業保険を申請した件数の統計だ。あまり詳しく解説されることはないが、実は発表される数字は季節調整がかかっている。

アメリカに限ったことではないが、失業保険の申請数は1年間の時期によって多い少ないの波がある。そのような季節による傾向を調整するために、ある時期は所定の係数をかけて実際の申請数より少なくし、別の時期は実際の申請数より多くしている。一般的には、年末年始前後は発表される数字が実際の申請数よりかなり少なく（つまり季節的に申請数が多い）、春夏秋にかけてはその逆になっている。

その新規失業保険申請件数だが、4月2日夜に発表された数字は664万8000件というとてつもない数字が出た。先週は328万3000件（今週に330万7000件に上方修正）でこれだけでも過去の最多記録を遥かに上回っていたのだが、今週の数字はさらに2倍に増えた。

これまでの最多記録は、1982年9月最終週につけた69万5000件だった。先週はすでにその5倍近くだったのだが、今週の数字は1982年の記録の10倍近くにもなる。また330万件が出る直前までは毎週20万件程度がずっと続いていたので、いかにCOVID-19によって失業がとてつもなく増えたかがわかる。

それではアメリカが過去不況期にあった時、この数字はいくつくらいだったのだろうか？この統計が始まったのは1967年で、1930年代の世界恐慌時の数字はない。しかし2008～09年のリーマン・ショック時の数字を見ることはできる。

アメリカの景気がまだ良かった2007年前半は、毎週30万件付近で推移していた。それがサブプライム問題が表面化した2007年夏を過ぎ、秋頃から少しずつ悪化。リーマン・ブラザーズが破綻した2008年9月第3週には48万3000件まで増えており、株式市場が大暴落した10月第2週は46万1000件。

それからも景気の悪化が続いたために数字は増え続け、ピークの2009年3月第3週には66万1000件となった。しかし今週発表された数字は664万8000件と、リーマン・ショック後のピークよりさらに10倍も多い。これがいかに異常な数字かおわかりだろう。

このような状態があと数ヶ月続けば、アメリカの失業者数は数千万人にも及ぶ。1930年代の世界恐慌時は、アメリカの失業率はピークで約25％に達したと言われる。そして恐ろしいことに、COVID-19のパンデミックとそれに伴う封鎖措置がアメリカで今後数ヶ月間続けば、失業率は世界恐慌時の25％にすら達すると予想されている。

アメリカは世界最大の経済大国であり、アメリカ経済が落ち込めば世界経済全体の落ち込みは必至となる。そしてアメリカの失業率が世界恐慌時並みになれば、世界経済も当時のように落ち込むことは避けられなくなる。