またも大谷選手の影響で動いた銘柄

今年3月に開催されたWBCで大谷選手が大活躍したことで、同じ名前の銘柄・大谷工業の株価が暴騰するという出来事があった。そして今週の24日日中に大谷選手の右肘靭帯損傷という大怪我が発表されたことで、今度は発表後に大谷工業の株価が7％暴落した。

3月は一時4倍近い暴騰

　すでに終了から5ヶ月が経ったとはいえ、今年3月のWBC（ワールド・ベースボール・クラシック）のことをまだ覚えている人々は多いだろう。

　このWBCでは日本が2009年の第2回大会以来14年ぶりに優勝したが、優勝に大きく貢献したのは投打にわたって大車輪の活躍をした大谷翔平選手（現エンゼルス）だったことは言うまでもない。

　ところでWBCにおける日本の快進撃と大谷の活躍は、意外な形で株式市場に影響を与えた。大谷と同じ名前を持つ会社・大谷工業（銘柄コード：5939）の株価が、WBCの盛り上がりと大谷の活躍とともに3月に暴騰したのだ。

　大谷工業はただ名前に「大谷」とついているだけで、野球とも全く関係がない金属製品の製造・販売をしている会社だ。しかしこの名前によって、この会社の株価は大谷の動向に大きく左右されるようになった。

　大谷工業の株価はWBC開幕前の3月1日の終値は4,230円だった。その後WBC開幕前日の7日頃から急上昇が始まり、8日に開幕した後は連日のようにストップ高になり16日には16,050円と開幕前の4倍近い水準になった。

　16日の時点でWBCはまだ終わっていなかったが、16,050円を天井として株価は下落に転じ終了直後の22日の終値は7,260円だった。

　その後はしばらく株価は6,000円付近に留まっていたが、アメリカで野球のオールスター投票が行われ大谷が選ばれる可能性が高まった6月29日には12,500円まで上昇。大谷はその直後の7月3日にオールスター出場が決定した。

　6月29日から8月24日までの約2ヶ月間、大谷工業株は緩やかな下げ基調になっていたものの、3月1日の水準より遥かに高い9,000円付近に留まっていた。そして8月23日の終値は8,560円だった。

　24日の大谷工業株は前場から後場の開始直後にかけて、前日終値に近い8,500円付近で推移していた。ところが午後2時頃になって、大谷が右肘靭帯損傷の重傷であり、投手としては今期絶望と発表された。打者としてどこまでやれるのかの詳細は発表されていないが、投手として絶望というだけでも大谷にとっては非常に厳しい状況だ。

　この事態が報道されると大谷工業株は急落し、7％安の7,960円で24日の取引を終了した。大谷工業はもともと出来高が少ない銘柄だったので、少数の新規投資家の参入でも大きく株価が動く可能性があった。しかし単に名前が同じというだけでそれ以外は全く関係がないエンゼルスの大谷の動向次第で動く銘柄になった事実も、いつか株式市場のトリビアとして語られるかもしれない。