なりふり構わず通貨防衛に走るアルゼンチン

先月の大統領選予備選以降アルゼンチンの通貨・ペソが下落している。大統領選予備選から3週間ほど経ってもペソの下落が止まる様子がなく、アルゼンチンは今週に入って国内の外貨取引を規制。昨年のトルコのようになりふり構わない通貨防衛を開始した。

企業・個人の外貨取引を規制

アルゼンチンでは先月11日に大統領選の予備選が行われた。その結果、左派のフェルナンデス候補が現職のマクリ大統領に対して15％もの大差をつけて1位。フェルナンデス氏は大統領になったらIMFの支援を見直すと述べており、この結果がアルゼンチンのデフォルト懸念を高めた。

大統領選本選は10月27日とはいえ、予備選でこれだけ大差がつくとフェルナンデス氏がこのまま大統領になるという見方が高まっている。

大統領選予備選の結果を受け、前週は1米ドル＝45ペソ付近だったアルゼンチンペソのレートは週明け12日になって20％も暴落し、55ペソを超えた。また同じ日にアルゼンチン株式市場の主要指数であるメルバル指数が、1日で38％も大暴落した。

その後アルゼンチン政府はすぐにペソ防衛策を打ち出し、14日には所得税の減税、社会保障の拡充、最低賃金の引き上げなどを発表。それでもペソ安が止まらず60ペソを超えたため、翌15日には食料品に対する21％の付加価値税（VAT）を廃止すると発表。VATは日本でいう消費税にあたる。さらに住宅ローン支払いの12月までの凍結も打ち出したため、ようやくペソ下落が一旦止まったかに見えた。

しかしそれから3週間ほど経ったものの、ペソは1ドル＝55～60ペソのレンジに留まっており、まだかなり安値にある。8月末には格付け会社のS&P、フィッチやムーディーズがアルゼンチンを格下げし、フィッチは「一部デフォルト」の格付けとした。

そして今週になって、ペソ下落を食い止めるためにアルゼンチン政府はさらなる措置を発表した。その内容によると。企業が外貨を購入するにあたって中銀による事前の許可が必要になる。さらに個人による米ドルの購入や送金は、月1万ドルまでと制限されるという。

アルゼンチンでは今週明けの2日になると、今後預金の引き出しが規制されるという懸念から市民が一斉に預金引き出しのために銀行に向かったという。アルゼンチンは歴史的に何度もデフォルトしており、預金封鎖が行われたことも何回かあるので、市民は自衛のためにこういった行動が素早い。

アルゼンチンも昨年のトルコのようにかなりなりふり構わずペソ防衛に走ってきたものの、今のところペソが大きく反発している様子はない。今後もペソ下落が止まらないなら、政府は追加でいろいろな政策を出してくることが考えられる。