なぜ仮想通貨のデリバティブは増えないのか

2017年後半の仮想通貨ブームが終わってから1年ほど経つものの、仮想通貨自体はまだ世界に存在して取引も行われている。しかし仮想通貨のETFや先物といったデリバティブは、なかなか数が増えない。仮想通貨デリバティブはどこが難しいのだろうか？

アメリカでETFは却下続き

2017年後半の世界的な仮想通貨ブームからすでに1年ほどが経ち、そのようなブームがあったことすら忘れている者も増えているかもしれない。またマスコミが仮想通貨を取り上げることもかなり減った。

しかし仮想通貨自体が世界から消えたわけではなく、取引は毎日行われている。新規開業の審査は厳格になったものの、日本の大手仮想通貨取引所は今でも業務を行っている。

そして仮想通貨でもETFや先物などのデリバティブを開発しようとしている動きも依然としてあるのだが、なかなか成功しない。日本ではあまりないのに対し、アメリカでは特にビットコインETFの申請はこれまで多く行われてきたが、それらは全て却下された。つい先月の12月にも、申請中のビットコインETFに対し審査をするSEC（米国証券取引委員会）が、2月末まで決定を延期すると発表した。

もちろん世界を見れば、ビットコインETFがすでに存在している国もある。だが世界最大の金融市場を持つアメリカではなく、日本にもない。アメリカの先物取引所であるCME（シカゴ・マーカンタイル取引所）やCBOE（シカゴ・オプション取引所）にはビットコイン先物が上場されているが、その後別の先物が出てきたという話は聞かない。

ではなぜ仮想通貨のデリバティブはなかなか承認されないのか？それは価格形成に不透明な部分が多いことや、株で言うインサイダー取引などの不正行為を取り締まる体制が整っていないなど、デリバティブを承認できる状態になっていないためだ。

例えば株式の場合、証券取引所が取引を管理しているので、何らかの不正行為があった場合は取引所が見つけることができる。また日本でいう証券取引等監視委員会のような、不正行為を監視するための機関もある。

為替取引は、一部を除いて取引所で管理されているわけではない。しかし日本円や米ドルなど「メジャー通貨」と呼ばれる通貨は、市場が巨大（取引量が多い）過ぎて誰かが不正にレートを操作することがほぼ不可能な状態にある。

強いて言えば各国政府や中銀が介入をすることなどで操作できるが、これらの機関は公共の利益のために動いており、特定の個人の利益のために不正行為をすることはほとんどない。一方取引量が少ない途上国の通貨は、個人の為替取引、つまりFXに使われることはあまりない。

これらの点から株や為替はある程度不正行為を防止し、あった場合は取り締まる体制がある。しかし仮想通貨にはない。仮想通貨は特定の発行体を持たないものも多く、また取引所で管理もされていない。不正な価格操作やインサイダー取引を取り締まる体制もない。

ビットコインETFなど仮想通貨のデリバティブがなかなか承認されないのは、こういった点に理由がある。だがこれは仮想通貨というものの性質上避けられない問題で、これらの問題をクリアするには今後少なくとも数年はかかるのではないだろうか？