ついに米はEUとも全面的貿易戦争に突入か

アメリカが今週になって、不公平な航空機競争の報復としてEUからの輸入品に対して年75億ドル規模の関税をかける措置を発表した。EUは対抗措置を用意していると報じられており、アメリカは中国に続いてEUとも全面的貿易戦争に突入しそうになってきている。

航空機問題から対立激化

今週になってアメリカがEUからの輸入品に対して75億ドル（約8,000億円）の大規模報復関税をかける措置を発表した。この関税は今月18日から発動される予定になっている。

この関税が起因する問題はかなり根深い。今回の問題は、アメリカと欧州の航空機産業の競争から始まっている。現在世界の民間航空機業界は、アメリカのボーイングと欧州のエアバスでシェアの大半を占めている。特に大型旅客機はこの2社でほとんど全てを製造している。

またエアバスは本社はフランスにあるが、株主はフランス政府の他にドイツやスペイン政府が入っており、特定の国に属さない「欧州企業」と言うべき存在でもある。だからEUは一丸となってエアバスを支援している。

長年航空機業界で争ってきた両社だが、2004年にアメリカが「EUはエアバスに対して不当な額の補助金を与えている」として、WTO（世界貿易機関）に提訴。またEUも米政府のボーイング社に対する支援が不当として逆提訴した。

そして米側からの提訴の判決が2018年5月に出て、EUの補助金が不当であることが認められた。不当であるとWTOが判断した場合、当事国は不正な行為を改めなければならず、改めない場合は提訴した国による制裁措置が認められる。

この判決が出た後もEUがエアバスへの補助金を止めないため、アメリカはEUに対して報復関税をかけることをWTOに申請した。それが最近になって了承されたため、今週米政府は75億ドルの関税を発表した。

関税はEUからの航空機に対して10％、農産物に対しては25％かけられる。ここで対象となっている農産物は、イタリア産チーズ、フランス産ワイン、ドイツ産コーヒーなどEUがアメリカに輸出している主要な品目となった。そしてこの関税は18日から発動される。

しかしアメリカは現在、中国との貿易戦争の真っ只中にある。中国との貿易戦争は昨年から始まり、今年になってますます激化している。最近になって対中国の追加関税第4弾も発動され、12月からはiPhoneなどアメリカの消費者がよく使っている品目も加わる。

中国とこれだけ激しい貿易戦争を行っているのに、さらにEUとの全面的貿易戦争が始まったらアメリカはさらに体力を失う。もちろんアメリカは世界一の超大国なので、中国・EUと同時に貿易戦争をしてもすぐに国がつぶれたりはしない。だがここまで貿易戦争を拡大してそれが長期化すれば、だんだんと体力を奪われていくだろう。そして大事な点は、一度始めた貿易戦争はなかなか終わらせることができないことだ。トランプ政権で始めてしまった以上、政権が変わっても当分は続くことも考えられる。