いよいよ日銀がデジタル円の入出金実験を開始へ

日銀が2年ほど前から研究開発を続けてきたデジタル円の実証実験の最終段階が、3大メガバンクや地銀の協力を得て来年春から開始される見通しになった。この実験が成功すれば数年後にはデジタル円が実用化される可能性がある。

フェーズ1は終了し2も順調

　仮想通貨の普及とともに、各国政府は法定通貨のデジタル版、いわゆるCBDC（中央銀行デジタル通貨）の研究開発に取り組むようになった。

　この分野に積極的に取り組んできたのは中国で、中国は2020年5月にはデジタル人民元の試験運用を広東省深セン市、江蘇省蘇州市、四川省成都市、そして北京の郊外の4ヶ所で開始。その後同様の試験運用が多くの都市に広がり、2022年初頭の北京冬季五輪では外国人も対象になった。

　日本は中国にやや遅れたとはいえ、日銀が2020年10月になってようやくCBDCとしてのデジタル円への取り組み方針を公表した。ここでは実証実験の進行がいくつかのフェーズに分けて行われることを示していた。

　フェーズ1は「システム的な実験環境を構築し、決済手段としてのCBDCの中核をなす、発行、流通、還収の基本機能に関する検証」とされた。これは文字通りデジタル円の基盤となるCBDC台帳システムを構築し、その検証を行うためのフェーズ。フェーズ1は2021年4月に開始され、今年3月に終了した。

　続いて今年4月からはフェーズ2「フェーズ1で構築した実験環境にCBDCの周辺機能を付加して、その実現可能性などを検証する」が開始された。フェーズ2は1年間行われる予定で、まだ結果などは公表されていないが順調に進んでいるものと思われる。

　そして来年4月から実証実験の最終段階であるパイロット実験として、民間銀行の協力を得て銀行口座でデジタル円の入出金などの実験を行うと、今週23日に報じられた。すでに三菱UFJ、三井住友、みずほの3大メガバンクが協力することが決まっているという。さらに一部の地銀も協力するとのことだ。

　このパイロット実験は2年間の予定と言われるので、2023年4月に始まると25年春まで行われると思われる。そしてパイロット実験の結果や問題点などを検証して、実用化に耐えうると判断されれば2026年にはデジタル円の実用化を判断するとのことだ。

　つまり順調に行けばあと3年半～4年程度でデジタル円が実用化されることになる。日銀はデジタル円の機能や役割として3つを挙げている。その3つとは「現金と並ぶ決済手段の導入」「民間決済サービスのサポート」「デジタル社会にふさわしい決済システムの構築」だ。

　デジタル円が実用化されるとどれくらい買い物や決済が便利になるのか今から想像するのは難しいが、導入が成功し便利になった世の中に期待してみよう。