【株式】サーベラスが西武HDの株式を全て売却し完全撤退

西武鉄道などを経営する西武ホールディングスの経営を2006年以来支援してきた米投資ファンド・サーベラスが、最近になってこれまで保有していた同社の株を全て売却したと発表した。これでサーベラスは西武の経営から完全撤退することになる。

2006年頃から西武を支援

首都圏で鉄道を運営する西武鉄道、プリンスホテル、そしてプロ野球の埼玉西武ライオンズなどを傘下に持つ持株会社・西武ホールディングス（銘柄コード：9024）。しかしこの企業が上場したのはつい最近の2014年4月のことだった。

というのも同社は以前は西武鉄道として上場していたが、2004年に有価証券報告書の虚偽記載が見つかり上場廃止処分を受けた過去があるためだ。上場廃止となり経営的に苦しい時期に支援をすると声を上げたのが、アメリカの投資ファンドであるサーベラス・キャピタル・マネジメント（以下、「サーベラス」）だった。サーベラスが出資した日本企業は西武が初めてではなく、その他にも長崎屋やあおぞら銀行などがある。

サーベラスは1,200億円を出資し西武の経営に参加。しかし経営に口出しをするようになると、西武鉄道の不採算路線の廃止や埼玉西武ライオンズの売却など、地元民の意向を無視した要求を出してきたこともあった。しかし西武側はこれらを株主総会で廃案にしつつ、サーベラスとの関係も何とか維持してきた。

そしてサーベラスの支援のおかげもあり、西武は西武ホールディングスとして2014年4月に再上場を果たす。ただしこの時の公募価格は1,600円と安く、また上場初値も1,600円だった。そのためサーベラスは西武株をすぐに売却せず、売却の機会を探ることになる。

再上場から3年あまり、、、サーベラスは先週になって「西武ホールディングスの全株式を売却した」と発表。これで2006年以来11年ほど続いてきた西武への出資が終わったことになる。

ところで最近の西武ホールディングスの株価を見ると1,900円台で、再上場当時の1,600円とそれほど変わりはない。だからサーベラスが売った最近の西武株は、再上場当時不満を持っていた価格・1,600円で売った場合とそれほど利益額は変わらなかったと思われる。

再上場以降の西武株の値動きを検証すると、しばらく上昇が続いたがピークは2015年4月の3,695円だった。その当時に売ったとしたらかなりの利益になったのは確かだが、ピーク当時にどれだけの西武株を売っていたかは外部の人間が知るところではない。2015年夏以降は中国バブルの崩壊などもあり、西武株は下がり続け現在ではすでに話したような1,900円台にまで下がっている。

しかし全体的に見て、サーベラスの西武への出資はお互いにとって利益のあるものになったのでないか。西武は上場廃止時の苦しい時代にサーベラスから支援を受けられたし、サーべラスは再上場後に株を売って利益を得た。西武ホールディングスはこれからサーベラスから独立した経営をスタートすることになる。