「マージ」完了でこれからはイーサリアムの時代か

9月に予定されていたイーサリアムの大型アップデート「マージ」が、15日に予定通り完了したと伝えられた。これでイーサリアムは電力消費の少ないPoSに完全移行したことになり、まだPoWのビットコインなどより優位に立つことも期待できる。

PoSのみの仮想通貨に

　今年9月に行われると言われていたイーサリアムの大型アップデート「マージ」が、日本時間の15日午後3時40分頃に完了したと発表された。

　「マージ」は英語だと「Merge」または「The Merge」と書き、「統合」を意味する。これはイーサリアム上にこれまで存在していたPoW（プルーフオブワーク）のブロックチェーンと、PoS（プルーフオブステーク）のブロックチェーンを、後者に統合して一本化するためのアップデートだった。

　PoWとはビットコインなどに使われる仮想通貨の取引処理方法のこと。PoWではマイニングによって有志が自分のコンピュータリソースを取引処理のために提供し、見返りとして少額の仮想通貨を受け取る。しかしPoWはマイニングのために多量の電力を消費するため、地球環境への悪影響が懸念された。

　そこで新しく生まれた仕組みがPoSだ。PoSの取引処理はステーキングと呼ばれ、仮想通貨を多く・長く保有している者に取引処理の役割が与えられ、報酬として仮想通貨が与えられる。PoSを採用すると電力消費がPoWよりかなり削減されるメリットがある。

　イーサリアムは当初PoWのブロックチェーンのみだったが、2020年頃に一部PoSに移行した。そして今回の「マージ」で、2020年以降混在していたPoWとPoSのブロックチェーンが、PoSに一本化された。

　イーサリアムを主に運営するイーサリアム財団の話によると、「マージ」アップデートによってイーサリアムの消費電力が99％以上削減できるとのことだった。すでにPoSを採用している仮想通貨は多いが、ビットコインに次いで2位のイーサリアムが採用した意味は大きい。

　場合によっては今後イーサリアムがビットコインを抜く日が来るかもしれない。「脱炭素」に見られるように、現在世界各国は環境問題に敏感になってきている。この状況では仮想通貨を使うなら、ビットコインより環境に優しいイーサリアムを採用したいと考える企業が増えることも考えられる。

　仮想通貨全体の時価総額の中でビットコインの割合を示す、「ビットコインドミナンス」という指標がある。これは仮想通貨が最初のブームになる2017年以前、つまり2016年まではビットコインが95％以上とほとんどを占めていた。つまりビットコイン以外の仮想通貨はほとんど流通していなかったのだ。

　だが2017年になって他の仮想通貨も買われ始める。そして2017年のブーム時はビットコインが17年12月に天井をつけたのに対し、他の多くの通貨は18年1月頃に天井をつけた。この差によって18年1月にはドミナンスは一時40％未満まで下がった。

　これは一時的な下げで、その後ドミナンスはまた上昇し2019～20年には70％前後まで上昇した。しかし次の仮想通貨ブームがきた2021年にはまた低下し、同年5月頃から22年9月現在まで1年以上40％前後で推移している。もはやビットコインのドミナンスは以前のように高い数字になる可能性は低くなったのだ。

　ビットコインとイーサリアムの時価総額の差はまだ2倍程度あるが、PoSへの移行に成功したため将来的にはイーサリアムが逆転をする日もあるかもしれない。