英EU離脱でさらに遠のいた米追加利上げ

米FRBは昨年12月にリーマンショック以降で初めての利上げを行ったが、その後は次の利上げがいつになるかが常に市場の議論の中心になってきた。しかし英EU離脱でリスク回避姿勢が急激に高まったことで、次回の利上げはさらに遠のいたと言っていい。

米金融政策の過去記事はこちら。

7月利上げはかなり難しい

アメリカはリーマンショックのあった2008年末に金利をゼロまで引き下げ、以後は日本のようなゼロ金利政策をずっと採ってきた。そして3回のQEを経てようやく景気が十分回復してきたと判断し、2015年12月に7年ぶりにゼロ金利政策を解除した。

去年の利上げ直後は、「2016年の追加利上げは4回」と見る市場関係者が多かった。ところが2016年が始まって見ると予想外の事態が続発したため、その見方は完全に外れる。まずは年初にあった中国発の世界同時株安。これで1～3月頃の利上げは完全にできなくなってしまった。

3～4月頃から株式市場が落ち着いてきたため、5月になると6月利上げの可能性はかなり高いと思われた。ところが6月初頭に発表された米5月雇用統計が悪い数字だったため、6月の利上げも見送られる。

そしてここに来ての英EU離脱である。英国民投票の結果が出て以来、市場ではリスク回避姿勢が広がり、円高、株安、金高 、債券高が急激に進行した。これではとても利上げをできる状況ではなくなった。

次回のFOMCは7月27日だが、ここで利上げがある可能性は極めて低い。そうなると今年残りのFOMCは3回。現実的に考えると、よほど経済が好転しないと、残り3回のFOMCで利上げをすることは難しい。2016年はこのまま追加利上げなしで終わるかもしれない。

では2017年に追加利上げはあるのか？それはアメリカや世界の景気状況次第なので、来年になってみないと分からない。仮に経済が今年より好転していたら、利上げが行われる可能性はある。

しかし反対に景気が悪化したら利上げは難しい。そして悪化の程度によっては、2015年12月に上げた0.25％の金利をまた引き下げてゼロに戻さないといけなくなるかもしれない。今後米株式市場の暴落があったら、緊急利下げという形でそれが行われることも考えられる。

日本は90年代後半頃からゼロ金利政策を続けているが、2006～08年に短期的に金利を引き上げ0.5％にしたことがあった。この時は、景気がそのまま順調に回復していたら、おそらくもっと引き上げて2～3％まで持っていこうという意図があったのかもしれない。しかし景気の回復は長続きせず、その後リーマンショックの不況入りで結局ゼロ金利に戻してしまった。以降7年間以上ゼロ金利をずっと続けている。

アメリカも同様のパターンにはまりつつある。去年12月に利上げを行い、今後あと数回はできるかもしれない。しかしちょっと景気が後退したら、またゼロ金利に戻さなくてはいけないのではないだろうか。