IMFが人民元のSDR構成通貨採用決定を延期

人民元の国際化を目指している中国が、IMFが設定している特別引き出し権（SDR）の構成通貨に人民元を採用してもらうことを目指している。しかしIMFは人民元の採用についてすぐに決定できないため、構成通貨の変更時期を延期すると発表した。

5年おきに見直されるSDR

最初にIMFのSDRについて簡単に説明する。IMFは各国の出資額に応じて資金引き出し額が決められており、それを特別引き出し権（SDR）と呼ぶ。そして現在のところ、SDRのレートは日本円、米ドル、ユーロ、英ポンドの4通貨を基準にして決められることになっており、また構成通貨は5年ごとに見直しが行われる。

中国は自国通貨・人民元をもっと国際化したいという希望を持っていて、そのためSDRの構成に「5つ目の通貨」として人民元の採用を望んでいる。SDRの構成通貨は5年ごとに見直されることはすでに述べたが、最後に変更されたのが2000年の独マルクと仏フランからユーロへの変更だった。

そして2015年にまた見直し時期がやってきており、中国は今年の見直しで人民元を採用してもらおうと働きかけていた。しかしIMFは結論が出るまで予定より時間がかかると判断。構成通貨の変更時期を、当初予定の2016年1月から10月に9ヶ月間延期すると、4日に発表した。変更時期が9ヶ月遅れるため、人民元を採用するかどうかの決定も、来年に持ち越される可能性がある。

延期されたのは、人民元の採用問題で加盟国間の意見が割れているためだと言われる。では、人民元の採用はどこが問題なのか？

まず人民元は、日本円や米ドルなど他の主要国通貨と違い、自由にレートが変動する仕組みになっていない。人民元は管理フロート制という制度を採用していて、固定相場制と違って変動はするが、中国政府が変動の上下幅を決めている。政府が設定した上下幅を超えて変動しないように管理されているのだ。

さらに人民元の場合、中国本土とそれ以外の場所でレートが別々に設定されているという事情もある。これらの材料から、人民元をSDRに採用すると混乱が生じるという懸念が残っている。

世界2位の経済に成長した中国は、今年になってアジアインフラ投資銀行（AIIB）を設立するなど、世界経済における自国の存在感を高めようとしている。しかし今回のSDRの件でもわかるように、人民元レートを自由化するなどまずするべきことをやっていない面がある。ただ人民元に関しては、SDRの構成通貨に採用されるために、中国政府が今後もっと自由化を進めていくかもしれない。