3500億円の偶発債務発覚で暗礁に乗り上げるシャープの救済

　一度は台湾の鴻海（ホンハイ）精密工業に買収されることが決まり、シャープ（銘柄コード：6753）の破綻はなんとか避けられると思われた。しかしシャープが臨時取締役会で鴻海の支援を受けることを決定した25日の直前に、シャープに3500億円の偶発債務があることが発覚。このために鴻海が契約締結を延期すると言い出し、シャープの救済は暗礁に乗り上げた状態になった。

シャープの過去記事はこちら。

偶発債務のため契約も延期に

経営難が続くシャープは、最近になって自力での経営建て直しをほぼ断念。外部からの救済を受ける道を模索していた。

そして最終的にシャープを救済する機関として絞られたのは2つ。台湾の鴻海精密工業と、日本の産業革新機構だった。鴻海精密工業は台湾のフォックスコン・グループの企業で、主に電子機器の組み立てを行っている。産業革新機構は、日本の官民ファンドだ。

だがシャープはその2つのうち、最終的に鴻海を選ぶ。25日の臨時取締役会で、鴻海の買収を受け入れると決定。鴻海も以前から乗り気なため、これで買収契約の締結はほぼ確定かに思われた。シャープが鴻海を選んだ理由としては、役員の雇用を保証すると述べていること（ただし従業員の雇用は保証しない）と、債権回収が見込めるため取引銀行が後押しをしたことがある。

しかしその後の報道では、シャープの決定直前の24日に、シャープに3500億円の偶発債務があることが鴻海側に通知されたとのことだ。偶発債務とは、現在債務でなくても将来的に債務として浮上する可能性のある金額を指す。

シャープの偶発債務にはいろいろあるが、主な内容は以下になる。まず従業員の住宅ローンの保証人になっているため、その金額が125億円。転売が禁止されているソーラーパネルの原材料は、将来使用しなかった場合にそのまま損失となるので、それが283億円。

そして堺工場で電気代の長期契約をしており、それが必要量以上になっているためその電気代の損失。またTFT液晶事業で欧米において訴訟を受けている、あるいはこれから受ける可能性があるため、その賠償などの費用。この2つは損失の見積もりができないとされている。

偶発債務が発覚したため、鴻海は契約締結について「しばらく後にする」とシャープに言ってきた。その一方産業革新機構は、シャープが鴻海に決めたことによって、シャープの救済は今後しない方針を決定した。

だが産業革新機構が手を引いたとなると、あとは鴻海が好き勝手にできる。もう鴻海しかシャープの救済を希望する企業は残っていないので、足元を見ていくらでも好きな条件を付けられるのだ。

それどころかこのまま救済せずに一度倒産させてから、安く買い叩くということも可能になる。倒産させてそれまでの債務を整理すれば、鴻海にとっても余計な債務を抱えずに済む。今後鴻海がどのような行動を取るのかシャープの将来を決める。

ともかく25日の取締役会後、3500億円の偶発債務発覚、産業革新機構の撤退、そして鴻海からの契約締結延期の通告など、シャープにとって非常に厳しい展開になった。株価も25～26日で25％近くも下落。鴻海の行動次第では、シャープはどうにもならない状況に追い込まれるかもしれない。