米の利下げは一旦始まればしばらく続く

米FRBが年内に利下げを行う可能性が高まっている。そしてここ20年ほどのFRBの金融政策を見ると、利上げや利下げは1回限りではなく、継続的に何度も行うケースがほとんどだった。つまり1度利下げを行うと、その後は利下げサイクルに入り利下げが続く可能性が高い。

利上げ・下げは2年程が多い

6月に入ってFRBのパウエル議長が「成長を維持するために適切な措置を取る」と利下げを示唆する発言を行ったため、FRBは今年中に利下げを行うという観測が高まっている。これは半年前には考えられなかったことだ。

2018年は半ば頃まで米株式市場や景気が比較的良かったために、2018年には4回の利上げを行い、19年も3回の利上げが予想されていた。ところが昨年10月と12月に世界同時株安になり、米景気にも減速感が出てきた。そのため今年の早い時期には、すでにFRBは「2019年中の利上げはない」と姿勢を転換していた。

そして今月になるとそこからさらに一歩緩和方向に傾き、今年中には利下げが行われるという観測が高まった。今のところ今年中の利下げ予想は1回か2回程度だが、FRBは1度利下げを始めたらその後しばらく利下げが続く可能性が高い。

過去20年ほどのFRBの金利の推移を見てみよう。1990年代後半は、細かい利上げと利下げを繰り返す時期が続いた。しかし2000年代に入ると、利上げや利下げを長期続ける政策が続いている。

2000年春にはITバブルが弾けその後アメリカは不況に突入したため、2001年1月にそれまで6.5％だった政策金利を下げて利下げサイクルを開始。この年の9月には同時テロがあり株式市場に不安が広がったために、売り圧力を和らげるためさらに利下げを継続。最終的には2003年1月に1％まで下げて利下げサイクルは終わった。（利下げサイクルは2年間で下げ幅は5.5％）

次には2004年6月に利上げを行い、ここから利上げサイクルが開始。この後はFOMCの度に毎回0.25％ずつ金利を上げることを17回も繰り返し、2006年6月に5.25％になった時点で打ち止めとなった。（利上げサイクルは2年間で上げ幅は4.25％）

しかしその約1年後、2007年夏にはサブプライム問題が表面化して米株式市場と経済に暗雲が立ち込める。そのため9月から利下げを開始し、2008年秋にはリーマンショックという大事件が起こり大きく金利を引き下げたために、2008年12月には史上最低水準の0～0.25％にまでなった。（利下げサイクルは1年3ヶ月で下げ幅は5～5.25％）

リーマンショック後の不況に対処するために2009年以降は長期間ゼロ金利とQE（量的緩和政策）を続け、ようやく金利をまた引き上げたのは2015年12月だった。そしてそこから2018年12月の3年間で、わずか2.25％の引き上げ幅というゆっくりとした利上げが続いた。（利上げサイクルは3年間で上げ幅は2.25％）

このように21世紀になってからの米金融政策は、利上げや利下げをまとまった期間行ってきた。それは利上げサイクル時は景気が好調で利上げが必要な時期が一定期間続いたのに対し、利下げサイクル時はその逆が起こっていたためだ。

FRBの前回の利上げサイクルは2018年12月ですでに終わったと見る者も多い。そして次に利下げがあれば、それは利下げサイクルの開始となるだろう。