外貨建て保険は投資商品と考えよう

ここ数年外貨建て保険の販売数が急激に伸びており、それに伴って外貨建て保険に関する苦情や相談の件数も激増しているというデータが出た。外貨建て保険を買うと為替リスクを抱えることになるため、買うならそれは「投資」と考えなければならない。

リスクを認識せず契約が多い

ここ数年で外貨建て保険の販売数が急激に伸びているというデータが、最近になって出た。そのデータによると生保大手5社が2018年に販売した外貨建て保険商品の総額は3兆6000億円で、前年比50％増だった。

しかしそれにともなって苦情や相談件数も激増しており、2018年に外貨建て保険に関してよせられた苦情は2,543件で前年比35％増。6年前と比べると4.3倍にも増えている。そして国民生活センターによせられる外貨建て保険関連の相談も、ここ数年で増えた。

では苦情や相談の内容はどのようなものかというと、外貨建て保険には為替リスクがあるために、為替の変動による損失が出たことや、その点について購入時に十分な説明がなかったというものが多い。

もちろん販売員がきちんと説明しなかったことは問題だが、消費者側としても外貨建て保険についての知識はあらかじめ持っておいた方がいい。外貨建て保険は預けたお金が外貨で運用されるため、常に為替リスクにさらされる商品になる。だから預金や円建て保険とは違う「投資商品」と思っておくべきものだ。

手数料や利回りを考慮に入れず、単に為替の変動による損益のみについて述べてみよう。例えば米ドル1万ドル分の商品を1ドル＝100円の時に買うと、その時支払った額は日本円で100万円になる。しかし将来解約したいと思った時に1ドル＝90円まで円高になっていれば、解約しても90万円しか受け取れない。反対に1ドル＝110円まで円安になっていれば、110万円と利益が出ることになる。

これはFXを行っている者なら普通に考えられる結果なのだが、外貨建て保険は銀行で販売するため、普段から普通預金や定期預金にだけお金を預けている人も多い。そのため為替リスクを理解せず、また銀行が売る商品だから預金のように元本割れを考えずに買ってしまうこともある。

しかしそれは間違いで、外貨建て保険は外貨に投資する以上、レバレッジ1倍のFXか、あるいは外貨預金と同じと考えるべきものだ。買えば常に為替リスクを抱え込み、元本保証はない。

外貨建て保険は「外貨で運用するから高利回りが得られる」という謳い文句を使っているものも多いが、今は海外も低金利な時代だ。外貨建て保険で使われることが多い外貨に、米ドル、ユーロ、豪ドルがある。その中で一番政策金利が高いアメリカでも2.25～2.5％、豪は6月に利下げをして1.25％、ユーロ圏にいたってはゼロ金利を続けている。海外も多くの国が低金利政策を続けている今は、外貨で運用しても利回りは大きくない。

つまり外貨建て保険でも利回りのメリットはあまりなく、円建て保険以上のメリットがあるとしたら為替差益のみになる。しかしそれも為替差損を抱えるリスクと表裏一体なので、外貨建て保険は「投資商品」と考えるべきものなのだ。