原油安の長期化で厳しくなるサウジアラビア

2014年後半から続く原油安が長期化し、今年になってついに30ドルを割った。安い原油は日本のような石油輸入国にとってはありがたいのだが、反対に輸出国にとっては経済・財政を厳しい状況に追い込んでいる。

リヤルは米ドルにペッグ

世界に産油国は多くあるが、それらの国々は長引く原油安のために経済的にかなり苦しくなってきている。そして世界最大の産油国であるサウジアラビアなら、なおさらその傾向が顕著だ。

サウジアラビアはリヤルという通貨を使っており、この通貨は米ドルに対して1ドル＝3.75リヤルでペッグ、つまり固定されている。サウジは反米色の強い国家が多い中東の中にあって、かなり親米な国である。だからこそ通貨を米ドルにペッグもしているのだ。

サウジの最近の苦境は、まず外貨準備高に見ることができる。2014年までは高い原油価格を背景としてサウジは国としての収入を伸ばしていき、外貨準備も膨らんでいった。2010年時点では1兆6000億リヤル（約50兆円）だったサウジの外貨準備は、2014年半ばのピークには2兆8000億リヤル（約87兆円）にまで増えた。

しかし2014年後半からの原油下落のために、その後は外貨準備が減り続け2015年末には2兆4000億リヤル（約75兆円）にまでなってしまった。これはサウジが外貨準備を取り崩していることを意味している。

このような状況にあると、サウジは現在の通貨制度を変更するのではないかという噂が出てくる。具体的には、現在1ドル＝3.75リヤルに固定されているレートを、切り下げるかもしれないと見る者もいる。リヤルを安くすることで、同じ値段で原油を海外に売ってもリヤル建ての収入が増える。あるいは相対的にサウジの原油が安くなるので、買い手も増える。

実際に中国は去年から顕著になっている経済減速に対応するために、何度か人民元の切り下げを行ってきた。

ただサウジの場合は切り下げによるデメリットもある。サウジは多くの食品や工業品などを輸入に頼っているため、リヤルを切り下げると、輸入品の価格が高騰するという副作用が出てくる。食品から工業品に至るまでの輸入品の価格高騰は、国民の間に不満を高める。

通貨をペッグ制にしている国が経済的に苦しくなると、ペッグ制を維持できなくなって変動相場制に突如移行することもありえる。それはペッグ制を維持するための外貨が足りなくなってしまったため起こることが多い事態だが、今のところサウジにはまだまだ外貨準備がある。しかしこのまま原油安とサウジ経済の悪化が続けば、将来的にペッグ制を維持できなくなるかもしれない。