トルコ再選挙が濃厚でリラがさらに下落の恐れ

6月に総選挙が行われて与党が過半数割れしたトルコは、これまで与党が行ってきた連立政権への協議が決裂しそうになっている。決裂すると再選挙をしなくてはならない。そのような政局の混迷が、トルコリラを対米ドルでデノミ以来の最安値に押し下げている。

連立協議はまとまらず

トルコ総選挙は6月7日に行われたが、選挙前からそれまで過半数を持っていた与党・公正発展党（AKP）の不利が伝えられていた。エルドアン大統領を擁する公正発展党は大統領の権限を強化する憲法改正を目指していたのだが、それが有権者の間で不評だった。

トルコの議会は一院制で550議席。公正発展党は選挙前は過半数の312議席を持っていた。ところが選挙で過半数割れの258議席と敗北。最大野党となった共和人民党（CHP）は132議席だった。それ以外には、民族主義者行動党（MHP）が80議席、クルド人政党の国民民主主義党（HDP）も80議席だった。なお全選挙区が比例代表制なので、この4党以外の小政党は一定の票を獲得しても議席は0だった。

ともかく公正発展党は過半数の276に届かなかったので、他党と連立を組むしか選択肢がない。しかし共和人民党など野党との連立協議で合意できず、8月23日の期限が迫っている。期限までに連立が組めない場合、解散総選挙が確実になる。

総選挙は解散の90日後なので11月下旬になる可能性が高いが、最高裁の判断で半分の45日後になることもある。

政局の混迷を受けて、トルコリラの下落が続いている。先週14日には対米ドルで1ドル＝2.84リラ付近まで下落し、2005年のデノミ実施以来の最安値を更新。17日になるとさらに売られ、2.86リラまで下げてまた安値を更新した。

対円の方では、円安地合が続いていることもありデノミ以来の最安値までは行っていない。最安値は2011年につけた1リラ＝40円台だが、現在は43円台だ。しかし今後更新も考えられる。

トルコでは20世紀に高インフレが続き、リラの価値も外国為替市場で下げ続けていた。2005年のデノミ前は、日用品を買うために1000万や1億リラを払うことが当たり前の社会になっていた。

しかし2005年に100万リラ＝1新リラのデノミを実施して以来、インフレは落ち着き為替市場におけるトルコリラの価値も下がらなかった。これはデノミ政策のおかげだと考えていた人もいるかもしれない。だが実はそれだけではなく、政局安定のためでもあったようだ。

トルコでは2002年以来13年間、公正発展党が議会で過半数を占めており、公正発展党政権で安定していた。ところがここに来て13年ぶりの過半数割れと、それに反応したトルコリラの下落。最近10年間ほどリラの価値が安定していたのは、デノミなどの経済政策以外に、政治的に安定していたことが大きかった。

今回その安定が崩れたことに加え、IS（イスラム国）との戦闘激化など別の火種も抱えている。トルコリラにとっては今後厳しい市場環境になっていくと思われる。