アルゼンチンはペソを防衛できるか

先週末に行われた大統領選予備選の結果を受け、週明けになってアルゼンチンのペソと株式市場が暴落した。暴落後アルゼンチン政府はペソ防衛のためにさまざまな対策を打ち出しているが、ペソ下落を止められるかどうかは分からない状態にある。

減税や賃上げなどを発表

アルゼンチンでは11日日曜に大統領選の予備選が行われた。そこでは左派のフェルナンデス候補が47％の票を獲得し、2位の現職大統領であるマクリ候補に対して15％もの大差をつけた。

しかしフェルナンデス氏は現在アルゼンチンが受けているIMFの支援を見直す政策を打ち出しており、フェルナンデス大統領になったら同国のデフォルトの可能性が高まるとの懸念が浮上。そのため週明けになってアルゼンチンの通貨・ペソや株式市場が暴落した。なお大統領選本選は10月27日に行われる。

週明け12日にはペソが30％以上も暴落して1米ドル＝55ペソを超え、史上最安値をつけた。またアルゼンチンの主要株式指数であるメルバル指数も、12日には38％も大暴落した。

ペソと株式の暴落を見て、アルゼンチン政府は今週になって次々と対策を打ち出してきた。14日水曜には経済を下支えするために、所得税の減税、社会保障の拡充、最低賃金の引き上げなどを発表。だがこれでもペソの下落は止まらず、15日日中にはついに1ドル＝60ペソを超えた。

そのため翌15日には早くも次の対策を打ち出し、食料品に対してかかっている21％の付加価値税（VAT）を廃止すると発表。VATは日本でいう消費税にあたる。さらに住宅ローン支払いの12月までの凍結も打ち出した。これらの政策のために日本時間の15日夜になってようやくペソは反発し、1ドル＝55ペソ付近にまで戻ってきた。

一方株式市場の方は13日火曜以降に反発している。12日には38％も暴落して27,530.80になったメルバル指数は、13日以降は多少ながら上昇が続いている。ただし15日終値になってもようやく31,000を超えた程度で、暴落前の44,000を回復するにはほど遠い。

この流れは去年のトルコを思い出させる。去年の8月10日にトランプ大統領がトルコへの関税を2倍にすると発言したことをきっかけに、10日と週末を挟んだ13日にトルコリラが大暴落した。

しかしその後はトルコ政府と中銀のなりふり構わないリラ防衛政策のために、13日の1米ドル＝7リラを底としてその後はリラが緩やかながら回復。ちょうど1年経った現在まで、この時の安値を更新していない。

去年のトルコリラ、今年のアルゼンチンペソともに、ちょうど日本のお盆の時期に重なって大暴落が起こった。去年はトランプ大統領の発言、今年はアルゼンチンの大統領選予備選とどちらも日本とは関係ない理由で暴落したため、お盆と重なったのはもちろん偶然だ。あとは今後のアルゼンチンがペソをどう防衛していくかに注目したい。