「あの」大暴落の黒幕が逮捕される

筆者 鳥羽賢 |

2010年5月6日の大暴落を起こしたとして、イギリス人トレーダーが逮捕された。

 2010年5月6日、日本では連休明けで投資家達が「さあ、取引を再開するか」と気を引き締めていた日。この日、NY株式市場でダウ工業平均が一瞬で約1,000ドルも暴落するという大事件が起こった。しかしこの時は真の原因が分からないまま、市場関係者も「誤発注があったのではないか」という推測だけ述べるに留まり、この事件はやがて忘れられていった。

 

逮捕されたのは……?

 

 この日の大暴落は、1987年10月19日の「ブラックマンデー」のように語られることがあまりない。その理由として、ダウ工業平均が場中に一瞬で1,000ドル近く落ちたが、その後はリバウンドして最終的には346ドル安だったなどの理由がある。346ドル安は大きい下げだが、毎年数回程度はあるので歴史に残るほどのものではない。

 ただし場中には相当異常な動きがあった。日本時間の7日午前3時頃、NY株式市場が突然大暴落を初め、ダウ工業平均が前日比約1,000ドル安にもなった。前日5日の終値は10,866だったのだが、6日に暴落した瞬間の安値は9,869。そして終値が10,520だった。

 また為替市場でも同様に急激に円高になり、米ドル/円は直近の高値94円から、暴落の瞬間には88円と一瞬で6円円高に。またユーロ/円は直近の高値120円台から、一瞬で110円台へ10円も円高になった。為替市場もまた、一瞬だけの暴落が終わるとかなりのリバウンドを見せた。

 ただ暴落後数日経っても、はっきりとした原因は発表されないし、分かっている者は誰もいなかった。市場関係者は「誤発注があったと思われる」などと推論を述べていたが、それを証明できる手段はなかった。

 すでに述べたようにこの暴落は一瞬のみで終値までにはかなり回復したため、ブラックマンデーのように歴史には残らずその後語られることはあまりなくなっていった。

ダウ工業平均週足チャート

 

 しかしそれから5年を経た今日になり、この暴落の黒幕だった人物がついに逮捕される。逮捕されたのはナビンダー・シン・サラオという36歳のイギリス人トレーダーだった。

 では一体どのようなメカニズムで、トレーダーの行為が暴落を引き起こしたのか?サラオ容疑者は、いわゆる「見せ玉」行為を行うことで暴落を起こしたというのだ。見せ玉行為とは株価操縦を狙って、場中に約定させる意思のない大量の買いや売り注文を出す行為を指す。その時出される注文を見せ玉と呼ぶ。こういった行為はどの株式市場でも原則禁止となっているが、完全には取り締まれていない。

 サラオ容疑者は暴落の日以前から見せ玉行為を行っており、累計で日本円で数十億円もの利益を得ていたという。そして5月6日に行った見せ玉行為によって、ダウ工業平均が1,000ドルも暴落する事態が起こったのだ。

 ただこのトレーダー1人のために、ダウが1,000ドルも暴落したと本当に断言できるのかは分からない。暴落は他の要因も含め複数の要因が絡んだために起こったものかもしれない。1つ言えることは、相場とは見せ玉のような行為で暴落が起こってしまうほど何が起こるか分からない世界だということだ。
 



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筆者について
鳥羽賢

慶應義塾大学経済学部卒業。輸入業務に従事後、ライターとして2003年より主に経済分野を中心に執筆活動を行う。企業トップへインタビューした上での、ビジネス記事執筆経験多数。ポータルサイト『オールアバウト』では、「世界のニュース・トレンド」テーマなどで、数年間政治・経済ニュース記事を執筆。FXの専門誌『月刊FX攻略.com』でも各通貨ペアの特徴解説など、FX攻略記事を執筆した経験がある。主な著書に、『とにかくわかる! FX超入門者』(すばる舎)などがある。翻訳活動も行い、FX投資教材の翻訳を中心に、金融分野の翻訳実績も多数。自身でも投資を行い、FXのトレードも2006年以来7年以上にわたって継続している。